ハノーファー万博 2000年
  はじめに テーマパーク 会場計画
  企業参加方式 ツーリズム計画と入場券 組織と人事
  交通輸送計画 カルチャー&イヴェント 参加国
  ワールドワイドプロジェクト 万国博覧会の歴史 ハノーファー
       
       

組織と人事 (GT 1997/6月号)

 
万博の主催者、ハノーファー万博公社EXPO 2000 HANNOVER GMBHは1億マルクの資金を有する私企業で、株主はドイツ政府 (40%=4000万マルク)、ニーダーザクセン州(30%=3000万マルク)、ハノーファー市(10%=1000万マルク)およびハノーファー商工会議所を筆頭にダイムラーベンツ社やドイツテレコム、プロイサック、ジーメンスなどが賛助企業として名を連ねるドイツ企業連合(20%=2000万マルク)である。

<組織>
万博公社の役割は博覧会を組織・運営することで、そのために建設、運営、マーケティング、コミュニケーション、PR、各国参加、インターナショナルプロジェクト、テーマパーク、観光などの各部署に約130人の社員が従事している。
 
博覧会の関連組織には、主に次のような団体がある。
 
政府代表 Office of the Commissioner General
  博覧会のホスト国であるドイツ連邦政府代表機関として、首都ベルリンに設置される。博覧会全体を監督し、各国の参加をはじめとした博覧会の内容、コンセプト、オーガナイズに関わる。トップ (Generalkommisarin) を務めるのは、東部ドイツ統合後にトロイハント(信託公社)で手腕を発揮したブリギット ブロイエルさん。
   
万博公社役員会 Supervisory Board of the EXPO 2000 Hannover GmbH
  ドイツの会社法に基づいて結成された組織。万博公社の、特に財政面および人事面を中心とした重要事項の決定に関わり、そのために年4回の定期的な役員会が開催される。 役員会のメンバーは株主によって決定され、その代表(Vorsitzender des Aufsichtsrats)はメルセデスベンツの前社長ヘルムートヴェルナー氏で、役員会のメンバーには現ニーダーザクセン州首相でSPDの次期首相候補と目されているシュレーダー氏、シュマールシュティーク・ハノーファー市長の他、連邦国会議員やプロイサック社取締役、フォルクスワーゲン社取締役など計10名である。
   
万博管理委員会 EXPO 2000 Kuratorium
  特にテーマパークを中心とした 博覧会全体の内容についてアドバイスや提案をする。フンボルト大学(ベルリン)のリヒャルトシュレーダー教授を筆頭に10名 ほどから成り立っている組織。
   
万博文化委員会 EXPO 2000 Cultural Board
  文化、芸術、エンターテイメント、スポーツ関連のプログラムやイヴェントに対するアドバイスを行う。 ベルント カウフマン・ヴァイマー財団長をはじめとする8人のメンバーが活動している。
   
国際アドバイザー委員会 International Advisory Board
  万博の新しい試みのひとつであるインターナショナルプロ ジェクト(博覧会のテーマと関連する世界中の様々なプロジェクトを通して開催地ハノーフ ァーだけでなく、各地で博覧会のテーマを広めようとするもの)を選考する役割を担う。選考基準は「国際的に受け 入れられるプロジェクト」で、特に第3世界と環境・開発に焦点を当てている。メンバーは前回のセヴィリャ万博委員会の メンバーであったリカルドディーツ=ホーホライトナー氏(スペイン)を長として、サウジアラビア、コロンビア、カナダ、ロシア、インド、そして日本など、様々な国の出身者で構成されている。
 
<人事>
つい最近、万博公社において大々的な人事が行れた。1995年10月より代表取締役トップの地位にあったテオドーァディーナー氏 は、今年に入ってから次席代表取締役ラインハルトフォルク氏との権力抗争に敗れ、3月の役員会で「ディーナー氏とフォルク氏の権限を同等とする」決定に より一歩後退し、4月に入ってからは病気であるとして欠勤していた。4月22日にはコール首相が公社を 訪れ、ディーナー氏が公社を去り、政府代表のブロイエル氏およびドイツ産業見本市社(ハノーファー)のヘックマン氏の2名を新しく公社の取締役に迎えることを発表した。これにより、公社はフォルク氏にブロイエル、ヘックマンを加えた3人体制となった。

公社のトップ交代劇は、前回のセヴィリャ万博の際と同様に何度も繰り返されて いる。ハノーファー万博公社での取締役の辞任は1994年8月以来ディーナー氏ですでに4人目だが、前任者2人を退任に追い込んだと噂されるほど権力をもっていたディーナー氏も、テーマパークに対する 財界の批判の声には太刀打ちできなかったのであろ う。財界と万博公社との橋渡しの役割をしているのが、役員会代表のヴェルナー氏で、1994年に万博公社が発足して以来連邦政府の推薦により役員会に名を連ねている。世界最高の自動車会社の頂点を4年ほど務め、メルセデス社と親会社であるダイムラー社の一体化という組織 改革により、今年に入って同社の社長を 辞任したが、万博公社役員会の代表の責務は引き続き遂行している。

このヴェルナー氏の推薦によって公社にやって来たのがフォルク氏で、 1996年8月1日付けで次席代表取締役に就任したが、当時は「ベンツエキスポ」になってしまう、などと批判も出たようだ。氏は財務、法務、マーケティングを統括し、役員会での評価も高く、財界との交渉を中心に期待が寄せられている。

財界に強いフォルク氏、政府の後ろ盾の あるブロイエル氏、ドイツ産業見本市社の経験を運営業務等に生かせるヘックマン氏の3人4脚で、1972年のオリンピック以来の大規模な国家行事であり、ドイツで初めて開催される万国博覧会の準備がスムーズに進むようになることが期待される。